健康の定義は時代とともに進化?
健康は国民の権利であり、健康を守るために、日本においては、医療保険制度ができて、病気の早期発見、早期治療が提唱されてきました。
では、健康とは、何でしょう?WHOの健康の定義によると、「健康とは、単に病気や虚弱でないことではなく、肉体的 (physical)、精神的 (mental) および社会的 (social) に完全に良好 (well-being) な状態を言う」とあります。現代社会においては、おそらく"ス トレス"は健康を害するトップリスクだと言えるでしょう。肉体的、精神的過多な負担になるような "ストレス" を抱える状態は決して健康とは言えません。ところで、少し前の新聞ですが、WHOの定義を見直すことになり、 "spiritual" という言 葉がつけ加えられたと報じました。しかし、これをどう理解するか、日本語訳をどうするか、日本の専門家は頭を抱えてしまったそうです。では、この "spiritual" はどういう意味でしょう。日本語訳は "mental" と同じく "精神の、 心 の" 、etc ですが、英語では "spiritual" は "mental" よりも高次元精神状態、つまり魂や生きがいのことを表す言葉です。しかし、日本語訳になるとなかなか区別がつきにくくなるのです。文化や言語の壁に直面してしまったわけです。例えば 日本語で "人" という1文字を、英語に訳すと場合によって "man"、"person"、 "people"、"human " 等になります。同様に、日本語では「精神」という1つの言 葉で "mental" と "spiritual" の両方が表現されています。私もそう理解していまし た。すなわち健康の日本語定義はあらためて書き換える必要はないのではないで しょうか。精神異常 (mental disorder) は病的状態ですが、チャレンジ精神 (challenge spirit) の有無は病弱と関係しません。しかし、健康状態では差が出てきます。それがWHOの新定義のポイントです。日本語訳にはすでにそのニュアンスが含まれています。つまり、日本は先がけていたと言えましょう。健康を最も大切な宝物にしたいものです。
1999年5月