原子力発電と自然エネルギー
2011年の一番の出来事は3.11大震災でしょう。報道によりますと、東日本大震災の被害額は阪神大地震をはるかに超えて15兆円以上にのぼるそうですが、実は原発事故という人災による損失のほうがもっと高額で、平成23年度政府予算の半分に匹敵する損失をもたらしています。被災地の復興を祈願しながら、いろいろと考えさせられます。
日本は地震多発国です。原子力発電所はその断層や予想される震源地に近いところにあります。それだけで原発の事故が起こる確率は高く、加えてその狭い国土に、これ以上原発事故が起きると国の存亡にかかわってしまいます。津波を阻止するために18メートルの防波堤を作ればいいかというと、また想定外の津波が来るかもしれませんし、それに1000億円を追加することは原発のコストが安いという通説を完全に覆してしまいます。福島では原発周囲2000平方キロの範囲が除染を必要とされ、このままでは、人が生活できません。狭い国土がさらに狭くなり、現存原発周囲の住民が、いつか自分も同じ目に合うかもしれないという恐怖感を抱きながら生活していることを想像すると、果たして、原子力発電は必要と言えるのでしょうか?また、使用済みの核燃料の廃棄処分方法は確立されていません。まるでトイレや下水道が設置されていないマンションに人を住ませるような無責任な状態です。劣化核燃料が無害になるのに10万年はかかります。後世にこの負の財産を平気で引き渡せますか?その間、テロリストの手に入れば、地球が破滅する恐怖さえあります。それでも原発コストが低いと言えますか?
では、原発に頼らなければ、生活が不可能でしょうか?いいえ、不便があっても、克服できないものではないし、何より安心は代えがたいものです。火力発電や水力発電は現在7割を占めていますが、残りの3割は、自然エネルギーでカバーできます。太陽光発電や風力発電はもちろんのこと、より安定供給ができるのは地熱発電です。火山と温泉が多い日本ならではの自然エネルギーです。地域単位なら、小型水力発電も有効手段です。
皆さんは健康づくりに運動をしていますか?ジムで自転車を漕いでいれば、そのエネルギーを電気に転換できますし、重量挙げなどの往復運動も有効に利用すれば発電できます。科学の進化で、これからも有効な技術が開発されるでしょう。路面や運動場の振動もエネルギー源となります。二酸化炭素も実は再利用できます。光合成により、CO2削減効果と新エネルギーの一石二鳥の効果が期待されます。
当院はいち早く、5年前に風力発電と太陽光発電を導入しました。私は原発にさよならと言いたいです。
2011年10月