『垂頭症』にかかっていませんか?
最近、車内や路上で、頭を垂らして、スマホやゲーム機をいじる光景がよく目につきます。食事中、授業中、歩きながら、時には、自転車や自動車の運転中にも、前方を見ずにスマホに目を奪われた人を見かけます。私はそれを「すいとうしょう」と名付けました。水痘症(水ぼうそう)でもなければ、水頭症(脳の病気)でもありません。「垂頭症」です。
垂頭症は、自分にとっても他人にとっても、迷惑なものです。込み合っている繁華街で、歩行者や電信柱にぶつかる人。友人は、運転手がメールをしながら、蛇行運転して、正面衝突を起こした現場を遭遇したそうです。また、スマホに気を取られて、強盗に遭うケースも耳にします。病院外来でも、スマホやゲームを手放さず、呼ばれてつまずいて転倒した患者さん。診察中もゲームに夢中で、問いかけに返事できない子供。これらは垂頭症のせいでしょう。集中力も聴力も視力も奪われているので、その危険性は言うまでもありません。さらに、めまい、頭痛、疲労感、、眼精疲労、肩こりなどの症状を併発する人が急増しています。
20世紀後半から21世紀にかけての便利な発明品の中で、とりわけスマートフォンなどの通信機器は、人々の生活の必需品となりました。それに伴い、本来、必要なときだけ使えばいいのに、使わないと落ち着かない依存症が報告されています。ネットから情報が氾濫し、その処理に追われ、余裕がなくなり、せっかくの便利グッズが不便をもたらしたと言うことです。一度、立ち止まって、自分が垂頭症になっていないかを確認してみませんか?それを治す妙薬はまだ見つかっていませんが、みんなでアイデアを出し合い、治す方法を考えましょう。
患者さんの話によると、患者の顔を見ないで電子カルテばかり睨んでいる医師がいると聞きましたが、それも困りますね。そうならないように私も気を付けます。
2013年9月